コロナ禍でもOKなパリ・オンラインツアーに参加した

フランス・パリ在住の作家・ミュージシャンの辻仁成さんが主宰するウェブサイト「Design Stories」を日頃よく閲覧している。先日、Design Storiesで紹介されていた「パリ・ヴェルサイユ宮殿のオンラインツアー」なるものに参加した。

もちろん参加と言っても実際にパリに出向くわけではない。自宅のパソコンの前に座って「参加」と言う名の「鑑賞」をするのである。ちなみにこのツアー、最初は参加料が有料であったのだが、事情が変わったらしく一転、無料となった。

このツアーを主催したのは「旅介(たびすけ)」という会社で、「旅行」と「介護」を結び付ける事業をしているという。普段は介護施設のお年寄りに、なかなか行くことが叶わない旅行を楽しんでもらいたいという想いで種々企画を行っているそう。

今回、この会社を興したしげちゃん(辻さんの友人)と言う方が、コロナで旅行ができないこの状況を少しでも楽しめるようにしたい!という情熱でヴェルサイユ宮殿と交渉し、見事約束をとりつけたという。それで「MCは辻さんで!」と勝手に決められてしまったとか。

ところが、ツアー日程が決まり準備が始まってみると開催が危ぶまれるほどのトラブルが続出。そのドタバタ劇が辻さんの日記に綴られており、当事者でない私には、失礼ながらも面白かった(辻さんは振り回されてだいぶ大変そうであったが)。

それでも何とか万障繰り合わせ、ツアーは予定通り9月21日、日本時間17時(パリは10時)にスタートした。

ふたを開けてみると、無料ツアーには1万人を超える申し込み者があったという。無料とはいえ、海外旅行に飢えている人が(私もその一人)ずいぶんいることのあらわれだろう。

このツアー、気分的には旅クイズ番組の「世界ふしぎ発見」を観ているような感じで、辻さんを案内役に番組が進行していく。辻さんはヴェルサイユ宮殿公式ガイドのカトリーヌさんのマシンガントークに圧倒されながらも1時間一生懸命観ている人を愉しませようと頑張ってくださった。

普通の旅番組と違い、なによりすごいのはこれは宮殿を貸し切ったうえでの生放送であるということ。逆にコロナのような事情でもない限り、ヴェルサイユ宮殿を貸し切るなんて途方もなく難しいはずで、それに加えての高画質。私は15インチのノートパソコンで観たのでその恩恵は少なかったと思うが、日本各地の介護施設では広間の大型テレビで鑑賞されたことだろう。

時折、回線が少し乱れるシーンもあったが、概ね安定した画質で観ることができた。(こちらのWi-Fiの環境かもしれない)

あっという間の1時間であったが、パソコンに映る「鏡の間」を観ながら私は思い出していた。2012年に母を連れて、ヴェルサイユ宮殿を訪れたことを。

当時の宮殿は、人、人、人。

世界中からの観光客で入り口からとんでもない行列ができていた。入場するまで2時間はかかったと記憶する。有名な「鏡の間」ではギュウギュウ詰めで全然進まない・・。観ているというよりは運ばれているという印象で「早くここから出してくれー」と思っていたことを思い出した。

その点、このオンラインツアーは貸し切りであったため、そういうストレスは皆無だ。椅子に座り、自分一人の空間で堪能した。

・・でももしも、これは言わない方がいいかもしれないが、世界でコロナ感染拡大が起きなかったら私はこの番組を観なかったかもしれない。実際に行くのとでは比べようもない、と思っていたことだろう。あんなにギュウギュウ詰めにされるにもかかわらず・・。

それを言ってしまったらおしまいだが、やはりリアルな旅への想いが募る。

とはいえこれが、今できる精いっぱいのことだろうと思ったし、インターネットなどの力を使って現状の行き詰まりを打破しようとする気概で努力されている方を称えたいと思った。

今後こういうオンラインツアーが世界各地で企画されてゆくのだろう。今回は旅行会社にとってもその試金石となったのではないか。

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