2020年1月末から2月の頭まで夫婦でアイスランドを訪れた。私たちが帰国したあたりから、世界はコロナウイルスの感染拡大が本格化し、海外旅行どころではなくなってしまった。
この旅行記を書いているのが2020年10月。旅から半年以上経過した今も、世界はまだまだ先の見えない状況にある。
そう考えたらば、あのタイミングでアイスランドへ旅ができたことはかなりラッキーであったと言える。
またいつ、次の旅に出ることができるだろうか。
アイスランド到着、レイキャビクへ向かう
成田からのフライトでデンマークでトランジット。翌昼12時にアイスランドの入り口、ケプラヴィーク国際空港に到着。
空港付近のレンタカーショップで車(フィアットパンダクロス、色はシルバー)を借り、そこから一路東へ車を走らせること約1時間、首都レイキャビク(Reykjavik)を目指す。
2016年に訪れたときのことを思い出しながら、絶景の広がる一本道を進む。
普段、けして観られない別世界の光景に圧倒されてしまう。運転しながら興奮が止まらない。
「いったい自分たちは今どこにいるのだろう?」
そんな非日常感が、旅への期待をいやおうなしにかき立てる。
レイキャビク、冬の街歩き
レイキャビクに到着すると早速ホテルにチェックイン。車をホテルの駐車場に置いて、しばらく街歩きしてみたい。
レイキャビクはちいさな街。日本の皇居ほどの敷地面積しかないという。
狭い道も多く人の往来も多いので車を走らせるのにはひと苦労。到着したばかりでまだ旅慣れていない我らには、散歩が気楽だ。
1月末のアイスランドは日照時間が11~17時と6時間程度。暗くなる前に到着できてよかった。
「たったの6時間?」と思われるかもしれないが、半月前ほどは3時間しか日が出ていなかったのだ。それからしたらずいぶんと長くなった(オーロラを見るには夜が長い方がよいけれど、暗いと移動に苦労する)。
ホテルの近く、レイキャビク北の海沿いを歩いてみる。4年ほど前にも同じ場所を歩いたのを思い出す。あの時は10月で、まだ雪はなかった。除雪されているとはいえ、道はツルツルに凍っている。油断すると転びそうになるが、地元のランナーたちはそれも馴れっこらしい。ものともせずに颯爽と走りぬけていった。
だんだん日が暮れてきた。
雪かきはされているが路面は凍っている。気は抜けない ブルーの世界の中、赤いタンカーが渡っていく光景ですら絵になる
雪のホワイトと、空と海のブルー。
全体的に青白い街を、徐々に街の灯りがオレンジに染めていく。
あかりが灯ってほっとさせてくれる
オフィスビルの灯りもオレンジ。個人的に、白い蛍光灯が使われていないことに好感を持った。ヨーロッパらしい灯りの文化だ。
サン・ボイジャー/The Sun Voyager
海沿いをさらに歩いて行くと、かの有名なサン・ボイジャー(The Sun Voyager)の前に出た。今回初めて見るが思っていたよりも大きい。
サン・ボイジャーは彫刻家ヨン・グンナル(Jon Gunnar)の作品で「アドベンチャーの魅力、発見の楽しみ、前に向かうの大切さや夢と現実の橋渡しを表現」したという。
ファクサ湾(Faxafloi Bay)の方を向いている。
一見、奇抜なデザインも、街の景観によく馴染んでいる。
薄暗い中でも抜群の存在感
とそこに、中国の人々を満載したツアーバスがサン・ボイジャー前に停車。
勢いよくバスから飛び出してき彼らの滞在時間はせいぜい、5分程度しかないのだろう。
サン・ボイジャーが薄暗さでもうあまりよく見えないと悟るや、彼らは三脚に据えた私のデジタルカメラを積極的に覗き込んできた。
撮った写真をプレビューしてみせてあげると、その画面をスマホで撮る猛者も。そのアグレッシブさに私は少し苦笑い。
世にも美しい劇場、ハルパ
散歩の折り返し点、劇場のハルパ(Harpa)に到着。
外壁はLED照明が仕込まれたガラスパネル。めまぐるしく色が変わるという一風変わった外観を持つ劇場。2011年完成。
正直「ド派手」な演出だが、日本の電工掲示版の類のようなケバケバしさはない。
1Fは土産物ショップ。北欧価格で手が出ない。 内装も凝ったつくり。ところどころに休憩できる椅子が置いてある
ハルパはオペラや演劇、音楽フェスAirwaves、カンファレンスなどが開かれる劇場だが、この日は演目が無く、自由に入れる様子。4年前は係員に止められたのでリベンジが果たせた。
階段で自由に上階にのぼって行くことができ、休憩できるベンチもある。歩き疲れたので少しここでひと休み。
外に出るとすっかり陽も落ちて凍みるような寒さ。そうだ今は一番寒さが厳しい時期なのだ。気が付けば歩いている人はほとんどいなくなっている。
踵を返してホテルに戻ることにする。
ホテルでちょっとしたアイスランド到着の記念パーティ。スーツケースに忍ばせてきたビールや保存食品たちで
街のランドマーク、ハットルグリムス教会
翌朝6時、早朝散歩へと繰り出す。まだ外は深夜のような暗さだ。
朝6時過ぎ、散歩へ。まだ深夜のよう。教会に通じるゆるやかな坂道 ハードなアートもこの街だと違和感がない 波乱の2020年となることはこのときまだほとんどの人が考えもしなかったろう
レイキャビクのランドマーク、ハットルグリムス教会(Hallgrímskirkja)の前へ。
ここは日中であれば、門戸が開かれているがこの時間は立ち入り不可。ライトアップされたこの教会は「スペースシャトルのよう」とよく言われるが確かにそうだ。教会に来たというよりは、宇宙ステーションにやってきたというほうがしっくりくる。
この教会は1945年から41年の月日を掛けて1986年に完成。70年以上前に建設が開始されたが誠にタイムレスな姿をしている。当時のアイスランドの人々はこの教会のデザインをどう受け止めたのだろう。
予想するに、おそらく多くのアイスランド人が好意的に受け取ったのではあるまいか。なぜなら、この奔放なデザインを受け入れるだけのアート寛容性が、今のレイキャビクの街にも存分に溢れているから。
4年ぶりに歩き回るアイスランド・レイキャビクも相変わらず、好き勝手にやっていた。もちろん、いい意味である。歩いていて心が高揚するアートが満載。飽きることがない。街全体がまるでアートミュージアムだ。
街の建物の壁一面、いたるところに描かれている巨大な顔や文字などのアート作品。結構ドギつくてシュールなやつもあるけれど、アーティスト主体で好きにやったんだなあと一目でわかる、遠慮なしの作品ばかり。壁は、キャンバスである。
かと思うと、夜なか、建物が密集するエリアで、とある住宅の2Fからロックバンドが練習する爆音が漏れだしていた。当然のように建物は防音ではない。古い建物の薄そうなガラス窓越しに練習している人々が見える。通りはその音で一杯だ。ヘタっぴでちょいちょい中断するけど、まさに街のBGMみたいに聞こえる。
自分の国ではありえないことだから、唖然としてしばらく通りからその部屋を見上げていたけれど、近隣の誰も文句は言わないようだった(たまに言われているかもしれないけど)。
さて、今日はこれからレイキャビクを離れ、南へ。ヴィークの街へ向かう予定。どうやら晴れの模様。まだ右ハンドルの運転は慣れない。安全運転で行こう。
“アイスランド真冬旅行記① – 到着、レイキャビクにて” への2件の返信