アイスランド真冬旅行記② – ヴィーク、セリャラントスフォス

旅2日目。危機一髪のイタイ思い出と、オーロラとの出会い。

本日目指すのはアイスランド南端の小村・ヴィーク(Vík)である。
今回の旅の目的のひとつ「ヨークルスァウルロン氷河」。ヴィークはその氷河のあるエリアまでの中継地点である。アイスランドでのドライブに慣れたかったこともあり、約200キロ程度のところのヴィークで1泊設けたのだ。

旅行記①レイキャビクはこちら

ヴィークへは首都・レイキャビクから(ゆっくり走れば)約3時間のロードトリップとなる。幹線道路である1号線をひたすら時計回り方向へ道沿いに進んでゆく。

出発11時、ようやく日が昇り始めた。
天気は快晴。視界良好!

レイキャビクからしばらく走ると、すぐそこには広大な自然が待ち構えていた。
途中で休憩を挟みはさみ、ゆっくり目的地を目指すことにする。

どこまでも広がる雪原でのドライブが気持ちがいい。
アイスランドには珍しく風も凪(なぎ)だ。

レンタカーショップでは最近発生したストームで破壊された車の画像を見せられ脅かされていたが、今のところはその気配はない(とはいえ、急変するのがアイスランドの天気。油断はしない)。

アイスランド全体を環状に取り巻く1号線は国一番のメイン道路。それゆえこまめに除雪されていて危険を感じることなく走れたが、スピードの出しすぎは禁物。ブラックアイスバーンでないとも限らないからだ。急ブレーキは避けたい。

それに景色を楽しみながらゆっくり旅をしたいので、私たちは時速60キロ程度を保った。車種にもよるが私たちが選んだフィアット・パンダクロスは4×4とはいえ、小型なので過信しない方が良いと判断した(あとで気付いたがスタッドレスタイヤの状態もよくなかった)。

1号線は制限速度90キロで、ほかの多くの車はたぶんそれ以上の速度で飛ばしていた。海外の人たちは割と命知らずな運転をする傾向がある。そのため、当然私たちはガンガン追い越しを掛けられるが、気にする必要はない。旅の間、煽り運転をする輩には一度も出遭わなかった。スマートに抜いていってくれる。

ドライバーは雄大なこの景色に見とれすぎないよう注意だ。
ちょくちょく車を停めて写真を撮りたい衝動に駆られるけれど、路肩に停めるのはやめたほうがよさそう。路肩は除雪された雪で覆われて状態がわからず、タイヤがハマる可能性があるから。
一度ハマったら抜け出すのは小型4×4では困難そうだし、後ろからビュンビュンと高速車両がやってくる。

数キロおきに何台か停車できる休憩スポットがあるのでそこで撮るか、同乗者がいるならカメラマンは任せたほうが無難である。

この旅最初の滝、セリャラントスフォスで痛い思い出

アイスランドで有名な滝のひとつ、「セリャラントスフォス(Seljalandsfoss)」が1号線沿いから見えたので立ち寄ってみた。65mの高さから流れ落ちる滝は圧巻。アイスランド内の滝の中でも規模が大きいもののひとつだ。

セリャラントスフォスは滝の内側に回って撮った写真が有名だが、夏ならいざ知らず、冬は水しぶきがすごくてとてもそこまで近づこうという気にはならない。

とはいえ、私も絶景旅で気が大きくなっていたのだろう。ここで痛い失敗をしてしまったので注意喚起の意味も込めてご紹介する(たぶん誰もやらないと思うが)。自然をなめると命がないぞ、という警告であった。

滝に向かって左側には木製のハシゴ階段があるが、冬は登らないようにしていただきたい。
登っていくほどに階段の手すり部、足元は分厚い氷でカチカチに凍っている。だが私は自分のトレッキングシューズを過信してしまい、「平気平気」と勢いよく登っていった。

滝の飛沫で視界がちょっと悪いが、なんとか最上部へ到着。
平面になっていると安心し、足を置いた瞬間に悟ったのだった。

「うぇ?ここ全部、アイスバーンだ・・」

虚飾なく、「死ぬ」と思った。

足が横滑りし、とっさについた手も空しく滑り、顔面を氷に打ち付けた。
鼻からは派手に血が流れ出た。ウインドブレーカーが赤く染まる・・。

滑落という最悪の事態には至らなかったものの、危ないところであった。梯子の下から不安げに私を見ていた妻は、急に視界から消えた私が滑落したと思ったそう。そしてその瞬間にすでに、自分が未亡人になったところまで想像したという。

ここには日本のような安全柵はない。
すべての行動は自己責任と心得なくてはならない。

と、そう強く肝に銘じた瞬間であった。

悪魔の住処(?)、ブラックサンドビーチ

滝を後にし、17時を回った。
早々と夕闇が迫ってくる。

日が昇ったと思ったら沈み始めるような感じで短いなと思うものの、夕暮れの時間帯が案外長く続く。これはこれでまた、雪山や雪原を夕陽が美しく染め上げていい時間である。
ただし太陽光がもろに目線に来るのでまぶしくて運転にはちとツライ。

暗くなってきて運転に若干の不安はあるが、宿のチェックイン前に食料品を買い出しすることにした。アイスランドは物価が高いので(日本の1.5~2倍は余裕でする)、レストランに毎度行くわけにもいかない。旅資金に余裕のない(私たちのような)方はスーパーマーケットの活用をお勧めする。「ボーナス(Bónus)」とか「クローナン(Krónan)」とかがその中でもお手頃価格。

今夜泊まる予定の宿「ファームハウスロッジ」を少し通り過ぎたところに小さなショッピングモールがある。有名な観光スポット「ブラックサンドビーチ」沿いに併設されたモールである。ここには先に述べたスーパー、クローナンがある。たくさんの旅行者が私たちと同じ考えで押し寄せ、店内はごった返している。
今夜泊まる宿では共同キッチンがあるので、ソーセージをボイルすることに。後はサラダを添えて簡単な夕食に。もちろんビールもかかせない。

買い物を済ませ、パーキングからブラックサンドビーチの入り口に立ってみた。

夕闇迫るブラックサンドビーチへの遊歩道は一度入ったら抜け出せない、悪魔の棲む城のエントランスのような雰囲気をたたえている。遠くに見える岩山が恐怖感を煽る。

入ってみたい気もしたが、昼の痛い失敗を思い出し、今日のところはおとなしくゲストハウスへ向かうことにした。これ以上妻に心配かけさせてもよくない。明日改めて訪れることにしよう。

「ファームハウスロッジ」はアイスランド女子二人が店番するこぎれいなゲストハウスであった。彼女たちはビリーアイリッシュをエンドレスで聴いていた。そういわれてみれば彼女たちの風貌もどこかビリーっぽい。アイスランドでもアメリカの新星は人気のようだ。

宿の外でオーロラ、出待ち

彼女たちのうち一人に「もうオーロラは見た?」と聞かれたので、まだと答えると「最近はちょくちょく見えるよ。トライしてみてね」と言われた。運転での疲れもあったが、夕食後、完全防寒着姿でカメラを携え、宿の外へでた。車で光害のない場所まで行きたかったが、すでにビールを飲んでしまったので、宿の庭で我慢。
それに真っ暗で凍結している道路は怖い。

23時。宿の外に引掛けられた外灯が眩しくてちょっと困りつつも、北の夜空をジィっとにらんでいた。最初は一緒に見ていた妻は寒いと言って部屋に戻ってしまった。めげずに待ち続ける。すると、徐々にモヤっぽいものが現れたように思われた。雲のようにも思われ、なかなかそれがオーロラであるとの確信が得られない。そこでカメラの長時間露出モードで映してみる。

淡いけれど、緑の帯が空にかかっていた。

間違いない、オーロラである。
興奮して妻を呼びに行った。ところが興奮する私に対して彼女は微妙なリアクション。

「うん、そうだね。確かに目視ではあんまり見えないけどさ・・」と私。

オーロラハントもほどほどに妻は再び部屋へ戻っていった。

それでも私は「まだまだ大一番がこれからやってくるかもしれないぞ!」
そんな期待を抱きながら寒空の下、粘るのであった。

そんな自分を、まるで少年のようじゃないかと笑ってしまった。
旅は私を好奇心の塊に変える。

明日はヨークルスァウルロン氷河湖へ向かうんだ。ロングドライブだぞ。

ほどほどにしとけよ、たびるす少年!

旅行記③につづく。

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